
三菱UFJ銀行と日本IBM、生成AI活用で勘定系システム開発をモダナイズ
三菱UFJ銀行と日本IBMは5月9日、生成AIとオープン技術を活用した勘定系システム開発のモダナイゼーションに向けて協働を開始した。今回の協業では、メインフレームと分散システム双方の強みを融合させたハイブリッド開発プラットフォームの構築を掲げており、次世代の金融インフラを支える人材育成や生産性向上を目指す。
三菱UFJ銀行では長年、安定稼働を続ける勘定系システムの維持継続と将来的な変革を見据え、「アーキテクチャーのモダナイゼーション」を進めてきた。プラットフォームにおいては、高信頼性で実績のあるIBMメインフレームを引き続き基幹基盤として利用しつつ、Red Hat OpenShiftベースのコンテナ基盤を導入。これにより、勘定系システムの一部機能を分散システムで稼働させ、柔軟性と拡張性を両立するハイブリッド型アーキテクチャーが採用されている。
今回、新たに開始された「開発のモダナイゼーション」では、勘定系システム開発の生産性と人材流動性を高めることに主眼が置かれている。具体的には、従来メインフレームで用いられてきた開発環境と、分散システムで利用が進むVSCodeやGitlab、Gitlab CIといったツール群の共通化を進めた。2024年度中には、これらツールのメインフレーム領域での適用検証によって、その実現可能性を確認済みである。
また、メインフレームで広く使われてきたPL/I言語の開発者支援のため、生成AIを活用した仕様書からのコード自動生成にも取り組んだ。この技術検証により、一定以上の精度でPL/Iコードを自動生成できることが認められ、今後は開発効率の大幅向上が見込まれている。
2025年度からは、本プロジェクトを本格化。ハイブリッド開発プラットフォームを全面的に活用した勘定系システム開発が本格化し、従来の分業的な技術者育成から、メインフレームと分散システムの両技術に精通した“マルチ人材”の育成・確保が期待される。
この取り組みにより、金融インフラ開発における生産性の向上だけでなく、技術者の流動性やキャリア多様性の促進も狙う。さらに、三菱UFJ銀行と日本IBMは今後、本プロジェクトの成果や知見を業界全体へ展開し、メインフレームの持続可能性や金融クラウド基盤の普及にも寄与していく構えだ。
両社はこれまでにも、基幹系システムの設計・構築において長年協力関係を築いてきた。今回の協業を通じて、先端技術と経験を結集し、日本の金融システムの信頼性向上とイノベーション創出を牽引する方針である。
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