
金融庁、マネロン・金融犯罪対策報告書公表 FATF審査へ有効性検証と業界連携促す
金融庁は2025年6月、「マネー・ローンダリング等及び金融犯罪対策の取組と課題」を公表した。文書は2024事務年度における政府と金融機関の取組状況を整理し、今後の課題を提示している。
第1章は金融機関におけるマネロン・テロ資金供与(以下マネロン等)対策を概観する。ガイドラインに沿った「基礎的な態勢整備」は2024年3月末に期限を迎え、ほぼ全金融機関で完了したと総括。ただし2028年8月に予定されるFATF第5次対日相互審査では有効性が重視されるため、リスクベース・アプローチ(RBA)に基づく検証と高度化が必要と指摘した。金融庁は検査・モニタリング、参考事例の公表、官民連絡会を通じて支援する方針を示す。
国際的動向では、2024事務年度にFATF勧告16(クロスボーダー送金の透明性向上)と勧告1(金融包摂)が改訂された。国内では暗号資産、高額電子移転可能型前払式支払手段、ステーブルコイン、クロスボーダー収納代行といった新サービスのリスクと対応状況を整理し、業態別の留意点を示した。有効性確保に向けた為替取引分析業の動向や「疑わしい取引の参考事例」改訂も取り上げている。
第2章は国民を金融犯罪から守る施策をまとめる。投資詐欺相談窓口の開設、無登録業者への対応、SNS広告監視、フィッシング対策、ATMでの詐欺防止など「被害に遭わせない」取組を列挙。さらに口座不正利用防止、金融機関間情報共有、警察への情報提供、在留期間満了外国人名義口座の利用制限、本人確認厳格化など「犯罪者のツールを奪う」施策を示した。継続的顧客管理に関する官民一体広報や警察庁との連携による啓発活動も強化する。
報告書は、マネロン等対策と金融犯罪対策は金融業の前提条件であり、犯罪に悪用されれば国内金融セクターの国際的信認を損ねると警鐘を鳴らす。金融機関にはリスクの変化に遅れず対応し、業界全体で底上げを図る「協調領域」として自主的な高度化を進めるよう求めた。
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