
FATF、トラベル・ルール監督の好事例集を公開 暗号資産取引の国際的規制強化へ
ポイント
金融活動作業部会(FATF)は6月26日、暗号資産取引に伴う「トラベル・ルール」の監督事例をまとめたベスト・プラクティス報告書を公表した。暗号資産コンタクト・グループ(VACG)が作成し、日本は共同行長国として取りまとめに協力。主要法域の好事例や教訓を共有し、FATF勧告に沿ったルールの世界的な実施促進を狙う。 金融活動作業部会(FATF)は2025年6月26日、暗号資産の移転時に送金元・送金先の情報伝達を義務付ける「トラベル・ルール」の監督に関するベスト・プラクティス報告書(原題:Best practices on Travel Rule Supervision)を公表した。報告書はFATF政策企画部会傘下の暗号資産コンタクト・グループ(VACG)が作成し、主要法域での監督当局の取り組みや課題、教訓を整理したものだ。FATFは各国・地域の実務担当者が報告書を参照することで、FATF勧告に沿った効果的かつ一貫したルール運用が促進されることを期待している。
トラベル・ルールは2019年にFATF基準に追加された要件で、暗号資産交換業者などのサービス提供者に対し、取引情報を相互に共有する体制整備を求めている。だが各国での制度化や監督手法は発展途上にあり、国際的な資金移動を悪用したマネー・ローンダリングを防ぐには監督当局間の知見共有が急務となっていた。
今回の報告書には、監督枠組みの設計、リスク評価の方法、事業者への技術的要件の伝達、国境を越える協力手続きなど、先行事例から得られた具体的な示唆が盛り込まれた。VACGは19年に設立されて以降、業界との対話や基準実施状況の把握を担当しており、日本は共同行長国として報告書のとりまとめに貢献した。
FATFは1989年に設立された多国間組織で、G7を含む38カ国・地域と2国際機関が加盟する。2001年にテロ資金対策、12年には大量破壊兵器拡散資金対策が任務に追加され、近年は暗号資産への対応も強化している。今回の報告書は公式ウェブサイトで公開されており、FATFは関係当局や事業者に活用を呼びかけている。
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