
金融庁、粉飾予兆管理レポート公表 AI活用など信用リスク態勢を検証
ポイント
金融庁は「金融機関における粉飾等予兆管理態勢の高度化に向けたモニタリングレポート(2025)」を公表した。5件の長期粉飾事例や代表的手口を整理し、金融機関の信用リスク管理を検証。定量・定性チェック項目の整備、AI活用、人材育成など5項目を重点的に把握した。金融庁は各機関の創意工夫による早期検知態勢の構築を促している。 金融庁は令和7年6月、「金融機関における粉飾等予兆管理態勢の高度化に向けたモニタリングレポート(2025)」を公表した。預金取扱金融機関を対象に実施したモニタリング結果や、近年相次ぐ長期・巧妙な粉飾事例を整理し、信用リスク管理の充実に向けた論点を示したものだ。
レポートは、(a)10年以上にわたり、(b)金融機関ごとに異なる決算書を提出し、(c)必要資料を開示しないなどの特徴を持つ粉飾の典型事例5件を提示。架空預金の計上、売上債権の二重計上、リース債務の未計上、循環取引など多様な手口が組み合わされ、発覚時には多額の与信費用計上を余儀なくされたケースが多いと指摘した。
こうした事態を防ぐため、金融庁は金融機関に対し「粉飾等の予兆をできるだけ早期に検知する態勢」の確立を促している。モニタリングでは、①定量・定性双方のチェック項目整備やAI活用を含む予兆管理態勢、②研修・教育と業績評価を通じた人材育成、③予兆検知後の組織内報告と営業店支援、④実際に予兆を掴んだ事例、⑤チェック項目の妥当性・有効性検証——の5項目を重点的に把握した。
金融庁は、レポートの論点を形式的なチェックリストとして適用する考えはないと明言しつつ、各機関のリスク特性に応じた創意工夫ある態勢整備を求める姿勢を示した。融資審査や期中管理を通じた信用リスク管理の実効性向上が、地域経済や国民経済の発展に資する質の高い金融仲介機能の維持につながるとし、金融機関に積極的な対応を期待している。
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