
三井住友海上とNEC、業務特化型生成AIを開発 全社員向けに運用開始
三井住友海上火災保険と日本電気(NEC)は4月22日、損害保険業界の業務に特化した大規模言語モデル(LLM)を共同開発し、全社員が利用する社内向け生成AI基盤「MS-Assistant」で本格的な運用を開始した。
三井住友海上では、2023年10月よりMS-Assistantにおいて、損害保険の商品規定や事務手続きルールなどの照会に自動応答する機能を導入していた。しかし、精度や実用性のさらなる向上の必要性から、NECが開発した生成AI「cotomi」を基盤とし、両社で損害保険業務に最適化したLLMを新たに共同開発。さらに、Azure OpenAI Serviceの照会支援機能も組み合わせることで、社内AIチャットの応答精度が向上したため、全社的な活用を決定した。
今回開発された業務特化型LLMは、約1万2,000人の社員から蓄積された日々のフィードバックを分析・学習し、ドキュメント検索や照会応答精度の継続的な改善に生かされている。両社による検証結果は国際学会「ACM International Conference on AI in Finance(ICAIF)」で論文採択されるなど、国際的にも高い評価を得ている。また、AIの出力における誤情報(ハルシネーション)といったリスクに対応するため、適切な運用ルールも全社員に周知・徹底している。
こうした生成AIの導入により、社員はAIと協働して業務を進めることができ、日常の照会業務の迅速化、情報検索の精度向上など、幅広い効率化効果が見込まれている。今後は、保険約款やFAQといったデータの追加によるAI機能拡充も順次進めていく計画だ。
さらに両社は、保険代理店向けのシステムにも生成AIを活用することを検討しており、より業界に特化したLLMの導入を進めることで、代理店業務の効率化や顧客への提供価値の変革も目指していく方針を示している。
三井住友海上とNECは、今後も生成AIを中心とした先端技術の活用を通じ、保険業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)と新たなサービス創出への取り組みを加速させる考えだ。
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